2017年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第113回 ラ・ラ・ランド

第113回「ラ・ラ・ランド」

監督の前作『セッション』は、ジャズへの愛が歪んだ方向へ突き抜けた、スリラー映画とも言える怪作だった。今作は完全に真逆だ。ジャズ(やミュージカル)への愛がポジティブに打ち出されていて、多幸感に満ち満ちている。物語は、極めてオーソドックスなラブストーリー。女優志望のミアとジャズバーを開く夢を持つピアニストのセブ。運命的に二人は出会い恋に落ちる。

ストレスフルな渋滞の高速道路で突然始まる、華やかで大掛かりなミュージカルシーン。ワンカットで見せる計算しつくされたオープニングに、いきなり心をつかまれる。ミュージカルと言っても、全体を通して歌い踊り出すのはここぞという場面だけだ。ジャズはしっとり聴かせるし、ドラマパートもしっかり丁寧に描かれていて、絶妙なバランスだった。
あらゆる場面が印象的なのだけど、個人的に良かったのは、ポスターにもなっているタップダンスのシーン。幻想的な朝焼けの中、微妙にギクシャクしていた二人の距離が歌とダンスでキュッと近づく。永遠に続いて欲しいと願うような美しい時間だ。他にも映画館で待ち合わせして出会うシーンや、天文台のプラネタリウムのデートシーン、恋愛の渦中を描いた場面は全てが魔法のよう。鑑賞後とにかく恋がしたくなる素敵なシーンだらけだ。
キャスティングは、セブ役にライアン・ゴズリング、ミア役にエマ・ストーン。セブのピアノ、切ない表情、そして何より恋をしているミアがとてつもなくキュート。
恋愛の甘々を描いていながら、映画はかなりビターな終わり方をする。詳しくネタバレできないが、恋愛の持つ夢と幻想、映画そのものが持つ夢と幻想。両方が重なり結実したような、切なく美しく力強いラストシーンに涙が抑えられなかった。
ちなみに『セッション』で鬼畜先生フレッチャーを演じたJ・K・シモンズも、チラッと出演しているのだけど、見事なまでの存在感を放っていた。

●監督:デイミアン・チャゼル
●出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン/キャリー・ヘルナンデス/ジェシカ・ローゼンバーグ/ソノヤ・ミズノ 他
●上映時間:128分
●配給:ギャガ/ポニーキャニオン

【イントロダクション】
売れない女優とジャズピアニストの恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスで描いていく。オーディションに落ちてばかりで意気消沈していた女優志望のミアはある日、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入りそこでピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。ぶつかりあう2人だったが、次第に互いの才能と夢に惹かれ合い恋に落ちていく――。

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