2017年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第111回 ドント・ブリーズ

第111回「ドント・ブリーズ」

低予算でありながら全米で大ヒットしたホラー映画という噂を聞いて、一年くらい前に似たような触れ込みで話題になった『イット・フォローズ』を思い出した。そっちは、ホラーというより青春純愛モノとして大傑作で、恐怖映画でありながら感動して涙ぐんでしまう程だった。一方本作『ドント・ブリーズ』は、ド直球のワンシチュエーションスリラーだ。

3人の若者強盗グループが押し入った家の住人が犬と暮らす盲目の老人で、それが実は元軍人でメチャクチャ強くて恐ろしい、主人公たちは恐怖の館から脱出できるのか? ……というのが作品の基本プロット。その老人がとにかく怖い。キャラとしての存在感が凄い。目の前にいる老人をやり過ごそうと息を止めジッとするシーンは、思わず息を止めて見入ってしまう。
老人が単に強いだけでなく、内面の見えなさが不気味で、モンスター的な怖さというより人間として恐ろしい。物語上でも、途中で地下室に隠されたある秘密が明らかになり、完全にヤバイ奴だとわかって、以降老人への恐怖は倍増する。一方若者側は、止むに止まれぬ事情を持った強盗でもあり極悪人というわけではないので、普通に感情移入できた。
盲目という設定のおかげで、それが老人の弱点になったり逆に強みになったり(いきなり停電させられる)、対決モノとしてもよく出来ている。単に老人が無双するだけでなく攻守が逆転もするので退屈しない。
残虐描写は控えめで、心理的恐怖を追求している印象。中でもインパクトを受けたのが、ヒロインが捕まって地下室であることをさせられそうになるシーン。映像的にはまったくグロテスクでないのにトラウマ級のおぞましさだった。
凝ったカメラワークや不穏なラストも良かったし、王道ホラーとして満足の一作だった。後、主人公が強盗だと自業自得感があるので、エンタメとして安心して観られるというのも、王道(調子に乗った若者が酷い目に遭う系)だ。

●監督:フェデ・アルバレス
●出演:ジェーン・レビ/ディラン・ミネット/ダニエル・ゾバット/ スティーブン・ラング 他●上映時間:88分 ●配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

【イントロダクション】
親と決別し、街を出るため逃走資金が必要だったロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスと一緒に大金を隠し持つと噂される盲目の老人宅に強盗に入る。だが彼は、目は見えないが、どんな“音”も聞き逃さない超人的な聴覚をもつ老人――そして想像を絶する<異常者>だった。
真っ暗闇の家の中で追い詰められた若者たちは、怪しげな地下室にたどり着く。そこで目にした衝撃的な光景に、ロッキーの悲鳴が鳴り響く――。 彼らはここから無傷で《脱出》できるのか――。

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