2017年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第110回 溺れるナイフ

第110回「溺れるナイフ」

山戸結希監督作品については、学生時代に撮った『あの娘が海辺で踊ってる』だけを評判を聞いて観ていた。青春を叩きつけたようなみずみずしい作品で、グッと来た印象が残っている。あれから数年経ち、遂にメジャーデビューといった感じの本作だ。
小松菜奈演じる主人公夏芽が、菅田将暉演じるコウに出会うプロローグシーン。いきなり海に飛び込む二人。瞬間現れるタイトルロゴ。夏芽のモノローグ。「(略)私が欲しているのは、体を貫くようなまばゆい閃光だけなのだ――」

少女漫画原作の実写映画を観て非現実的なセリフやポエティックな独白シーンが来ると、妙にダサく見えることが多い。「漫画で読んだら素敵なんだろうな……」とガッカリするのだけど、本作はしっくり来すぎて冒頭からヤラれてしまった。演出もさることながら、とにかくキャスティングが良い。二人共ハマり役だった。
物語が始まると、エピソードの積み重ねもない内にそうなることが運命であるかのように二人は恋に落ちる。演出力なのか役者の力なのか、序盤のこの辺りは特に素晴らしく、衝動的な恋とはこういうことなのだと映像で説得させられてしまった。そしてオーラを放つような美しい二人の万能感溢れる無敵の恋が始まる。しかしある事件によって、恋は唐突に終わりを迎える。二人は別れ、魔法が解けたようにただの少年と少女になってしまう。二人は再び輝きを取り戻せるのか、というのが中盤以降の展開だ。
長回しや小刻みなカット割り等、演出の才気走っている部分はとことん鮮烈。二人の痛々しいやり取りも眩しいくらいの若々しさで、(大好きなのにどうして!)と叫んでいるようにしか聞こえない「大嫌い!」という夏芽のセリフに、泣きそうになってしまった。
一方で、暴力描写部分の一部は拍子抜けなくらい刺激が足りなく感じた。自分の撮りたいシーンと、そうでないシーンがハッキリしている監督なのかもしれない。この先も才能を伸ばしていきそうな予感がバリバリするので、次作以降も楽しみにしている。

●監督:山戸結希
●出演:小松菜奈/菅田将暉/重岡大毅(ジャニーズWEST)/上白石萌音/志磨遼平(ドレスコーズ)/斉藤陽一郎/嶺豪一/伊藤歩夢/堀内正美/市川実和子/ミッキー・カーチス 他
●上映時間:111分 ●配給:ギャガ

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