2017年2月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第108回 BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント

第108回「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」

スピルバーグ監督作品をスクリーンで観るのは、『タンタンの冒険』以来5年ぶりだ。昔は熱心に追いかけていたけど、自分好みのスピルバーグらしい作品(悪趣味な残虐描写や主人公を絶望させる意地悪な展開に満ちた娯楽作)が少なくなって以降、関心を失っていた。本作で久しぶりにしっかり観た結果、今スピルバーグへの関心が戻ってきている。

孤独な少女と“やさしい巨人”の友情を描いたファンタジー。老若男女が楽しめるファミリームービーという立ち位置なんだろうけど、僕が最初に抱いた印象は「この巨人…なんかキモい」だった。巨人的キモさというより老人的キモさだ。善人面した貫禄ゼロの笑顔。他の巨人からイジメられてもヘラヘラしている気弱な精神性。老人なのに、のび太的ダメ主人公に設定されていて、その「老いた子供」のような歪さが、自分には不快だった。
言うまでもなく、スピルバーグは意図的に未成熟な老人を描いている。この老巨人は、おそらく「映画界の巨人」スピルバーグ自身ではないだろうか。巨人は夜な夜な街へ出て、眠っている子供たちにラッパのようなもので「夢」を吹き込む。これはスピルバーグが人々に映画を見せていることの(あまりにも分かりやすい)メタファーだ。そう考えると、ラストの展開は「近所にヤバイ奴がいるから警察呼んだ」ってだけの話で、老人の成長とはほとんど関係がなく、色々と考えさせられる。
僕自身、一人で十数年セコセコ漫画を描き続けているわけだけど、将来キモい独居老人になって「いつか目の前にピュアな少女が現れて自分を救ってくれる」とか夢想しながら生きていくことになったら…と思うと、暗澹たる気持ちになる。この老巨人は少女をさらってくるのだから(少女はストックホルム症候群によって老巨人に懐く)、かなりヤバイ話だ。
久しぶりに観たスピルバーグは、相変わらず別の映画に偽装したギリギリの話をやっていて、面白かった。

hitokoma105

●監督:スティーブン・スピルバーグ
●出演:マーク・ライランス/ルビー・バーンヒル/ペネロープ・ウィルトン/レベッカ・ホール/レイフ・スポール ほか
●上映時間:118分 ●配給:ウォルト・ディズニースタジオャパン

【イントロダクション】
ロンドンの児童養護施設に暮らす好奇心旺盛な10歳の少女ソフィーは、真夜中に目覚めると、ベッドから“巨大な手”に毛布ごと持ち上げられ、「巨人の国」に連れて来られてしまった。ソフィーを連れ去ったのは、夜ごと子供たちに「夢」を届ける、やさしい巨人BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント。ひとりぼっちだったソフィーは、巨人だけど孤独なBFGとお互いに心を通わせ、「奇妙な友情」が生まれて行く。それまでちっぽけな存在だった2人の間に生まれた友情は、世界に大きな変化と奇跡を生み出すには十分なものだった。そして、ソフィーの小さな勇気が大きな巨人を動かし、やがてイギリス最大の危機を救うことになる――。

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