2016年12月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第106回 ハイ・ライズ

第106回「ハイ・ライズ」

高層マンション内での階級闘争がエスカレートして、内戦状態になる。J・G・バラードの原作を初めて読んだのは数年前だ。自分が生まれる前に書かれたとは思えない現代的な内容に驚愕し、夢中になって読んだ。映画化のニュースを受け、「デビット・フィンチャー辺りか、それか安心のクローネンバーグが良いな…」とか夢想していた所、ベン・ウィートリー監督と聞き、不勉強な自分は「ん、誰だ?」と一瞬不安になった。

結果的に、映像美にこだわった世界観の強い作品に仕上がっていて、個人的には満足だったものの、賛否ありそうな内容だとも思えた。ストーリーはシンプルだけど、わかりやすさを廃した演出が多く、全体的に難解な映画という印象だ。とは言え、主演のトム・ヒドルストンが常にカッコよく、ファンであればトムヒを目で追っていれば難解さなど気にならないかもしれない。主人公以外のキャラクターでは、ドキュメンタリー監督のワイルダーが良い。登場時は粗暴で嫌な奴としか思えなかったけど、後半カメラを片手にボロボロになりながら最上階を目指して突き進む姿は、応援したくなる。
格差社会を閉鎖空間で描いた映画としては、列車を舞台にした『スノーピアサー』を思い出した。『スノーピアサー』程ぶっ飛んではないが、屋上の庭園に馬がいたり、本作も現実離れした世界観で建物内を表現している。マンション全体の構造を具体的に見せないのが最初はストレスだったけど、現実感を失くさせるという意図があるように感じた。
マンション内が荒廃した後の風景は、比喩でなく完全に内戦状態だ。死体が普通に転がったりしていて見応えがある。そしてこんな状態にありながら、そこから出て行かない住人たちのマンションに対する奇妙な愛着が、最終的には何となく理解できた気がして、バッドエンド風でありながら意外と後味は悪くなかった。
とっつきにくいけど、繰り返し観たらどんどん好きになるタイプの映画だ。

hitokoma103

●監督:ベン・ウィートリー
●出演:トム・ヒドルストン/ルーク・エヴァンス/ジェレミー・アイアンズ/シエナ・ミラー/エリザベス・モス

【イントロダクション】
理想のライフスタイルを求めて、ロンドン郊外の高層マンションハイ ・ライズに引っ越してきた医師のラングは、毎晩のように隣人たちが開く派手なパーティに招かれて新生活を謳歌していた。あらゆる設備が整ったこのマンションはまさに理想郷に見えた。しかし、ラングは低層階に住むワイルダーから、フロア間に社会的地位に基づいた階級が存在し、互いに牽制しあっている事実を知らされる。そして、ある晩に起こった停電を境に住民達の不満はついに爆発し、マンション全体を巻き込んだ暴動へと発展していく―。

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