2016年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第104回 デッドプール

第104回「デッドプール」

公開前の予告に魅了され、速攻で原作の日本語版を取り寄せて読んだ程度のにわか『デッドプール』ファンである自分からしても、大満足の出来だった。
コメディの邦訳は、言い回しの微妙なニュアンスがわからなかったり元ネタを知らなかったり、完全に理解することは不可能だ。いつも脳内補正しながら楽しむのだけど、本作はセリフが多いながらも素直に楽しめた。

アクションシーンの、ある過激な一瞬を切り取って、止まった時間の中でカメラをゆっくりと自在に動かす凝ったオープニングから、映画は始まる。ハローキティグッズがあったり、デップーの股間アップがあったり、世界観やキャラクターがわかりやすく提示され、いきなり引きこまれた。映画前半は、この高速道路でのアクションシーンと、デップーがなぜ不死身の男になったのか語られる回想シーンが、テンポよく交互に展開されていく。
演出やストーリーも良いのだけど、この映画で突出しているのはデッドプールの強いキャラクター性だ。彼はとにかくずっとジョークを言っている。言う相手がいなくても、映画を観てる観客に話しかけてくる。毒舌ネタ、下ネタ、デップー役のライアン・レイノルズ自身が主演してコケた『グリーン・ランタン』を茶化すメタネタ、自分の手首を切り落として脱出する場面ではカメラに向かって「『127時間』観た?」と言ったり、映画ネタも多い。始終ふざけて見えるのだけど、彼の背負う悲しい現実も丸ごと笑い飛ばしているような気骨さを感じて、気持ちがいい。
彼は世界を守るヒーローではないし、正義感も強くない。でも恋人ヴァネッサを傷つけるものは許さない、ある面では一途な普通の男だったりもするのだ。ヴァネッサとの関係は馴れ初めから丁寧に描かれていて、そういう意味では、この映画はラブストーリーとしても熱い。『キック・アス』や『キングスマン』が大丈夫な相手とだったら、デートムービーとしても勧められるかもしれない。

hitokoma101

●監督:ティム・ミラー
●出演:ライアン・レイノルズ/モリーナ・バッカリン/エド・スクレイン/T・J・ミラー/ジーナ・カラーノ/ブリアナ・ヒルデブランド 他
●上映時間:108分
●配給:20世紀フォックス映画

【イントロダクション】
原作は、マーベルコミックの人気作「X-MEN」シリーズのスピンオフ「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」に登場した毒舌家で自己中心的という型破りなアンチヒーロー、デッドプールを主役に描いたアクションエンタテインメント。かつて特殊部隊の有能な傭兵ウェイド・ウイルソンは、第一線を引退し好き勝手に悪い奴らをこらしめ、金を稼ぐヒーロー気取りの生活を送っていた。恋人のヴァネッサとも結婚を決意し幸せの絶頂にいた矢先、ガンで余命宣告を受ける。謎の組織からガンを治せる治療があると持ちかけられ、壮絶な人体実験を受け驚異的な治癒能力と不死の肉体を得たが、醜い身体に変えられてしまった。ウェイドは、赤いコスチュームを身にまとった「デッドプール」となり、人体実験を施した謎の組織の行方を追う――。(R15+)

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