2009年11月30日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第23回 サマーウォーズ

第23回「サマーウォーズ」

「田舎のだだっ広い日本家屋に集まった大家族」というモチーフは、ドロドロした愛憎劇やら一族の理不尽な因習やらと、息苦しく閉鎖的な世界が似合うのだけど、子供向けでもあるこの作品は、涼しげな風が吹き抜ける、さわやかで和やかな世界が描かれている。それは理想郷的な家族観ではあるものの、かと言って嘘臭さや薄っぺらさ等、不快な印象を感じる事はほとんど無かった。

この映画が、「家族」ではなく、家族を含んだ「人と人との絆」をテーマに作られている所に、恐らくその原因の一端がある。大家族と電脳空間。分かりやすい対照的な二つの世界を舞台にしながらも、「ネットは良くない! 家族を大事にしよう!」的な説教染みた話にはしていない。ネットでも家族でも、全てにおいて人の繋がりが大事だと説いている。そこが公正であるし、家族内で世界が閉じていない。
 一族それぞれの描き方もまた、意識的に外向きに作られている。警察官、レスキュー隊員、消防士、救命士、自衛官、水道局員、医者や漁師や電気店。一族の男達の多くは、地域社会と密接な関係にある職業に就いている。そこで「仕事人間は良くない! 家族へ帰う!」という家族主義を強固に振りかざしたりはせず、たとえ家族の緊急時と社会の緊急時が重なった時でも、公正な秤にかけて、社会への貢献を優先できるバランス感覚を持ち合わせている。
 一族の外側に、しっかりと社会に根付いた土台があるからこそ、全員が一堂に会した場でも空気が淀む事無く、互いにゆとりある関係を保てる。それは、一見引きこもりっぽいがネットに居場所を持つ中学生のカズマも同じだ。そこもまた公正に描かれている。
 家族と地域社会は繋がっていて、その延長に世界がある。そして世界を守る事が家族を守る事へと、シームレスに繋がっている。そこに極端な短絡は無い。理想郷映画ではあるものの、気持ち良く受け入れられる丁寧な作りの作品だ。
 ひとつ残念な所があるとすれば、この映画は監督の過去の名作「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」に基本的なストーリーラインが酷似している。細田監督ファンとしては、先の展開が見えてしまって少し物足りなく思えた。

監督●細田守 脚本●奥寺佐渡子
声の出演●神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、富司純子、斎藤歩
上映時間●114分 配給●ワーナー・ブラザース映画

【イントロダクション】
取り柄と言えば数学好きなことである高校2年生の健二は、憧れの先輩、夏希に連れられて長野の田舎へ行くことに。待っていたのは、一族の大黒柱である曾祖母、栄とエネルギッシュな親戚たち。夏希のフィアンセ役を演じるという使命のもと、大家族の一員となった健二に、その夜、不審な数学クイズのメールが届く。数学好きの虫が疼きだし、夜を徹して解答を導き出すが、それが大災難の引き金になってしまう。

PAGE TOP