施川ユウキ映画コラムー全ての映画は、ながしかく

2019年10月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第140回 シャザム!

第140回「シャザム!」

マーベルと対照的に、陰気なノリで今ひとつパッとしなかったDC映画が、少し前から方向性を変え、ワイルドで快活な『アクアマン』で大爆発。DC映画史上最大のヒットを記録しているという。本作『シャザム!』は、DCの陽キャ路線にふさわしい、笑いあり涙ありの、エンタメヒーロー映画だ。
身寄りのない悪ガキビリーは、里子たちを抱えるバスケス家にやってくる。しかし一家に心を開くことはなく、生き別れの母親を見つけることだけが生きる目的だ。ある日スーパーパワーを手に入れシャザムとなったビリー。彼の成長物語が、本作の基本プロットになっている。
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2019年9月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第139回 ビューティフル・ボーイ

第139回「ビューティフル・ボーイ」

『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ主演、ドラッグにハマった青年ニックと、彼を更正させようと奮闘する父親の物語。スティーブ・カレル演じる父の視点で、息子を理解し支えようと苦闘する様子が静かなタッチで描かれ、胸に迫る。
ニックは成績優秀でスポーツもでき、父親との関係も良好、正にビューティフル・ボーイだ。しかしどこか満たされない穴を埋めるように日常にドラッグが入り込み、やがて人生が奪われていく。更生施設を抜け出し再発を繰り返すニック。終わりの見えない闘いに疲弊していく父親。実話を元にしているだけに、ひたすら生々しい。物語は地味で、大きな展開はないが、ティモシーの美しさと演技に魅せられっぱなしで退屈することはなかった。ニックの恋人(兼、ドラッグ仲間)も美人なのだけど、正直ニックの方がかわいく見えてしまう。映像は美しく演出も繊細で、所々サスペンスフルだ。順調に薬抜きを成功させ施設から一時帰宅し、幼い弟と海で遊ぶシーン。やりすぎない微妙な不穏さでザワザワさせられる。(ここで弟が海難事故に遭い、再びドラッグに手を出すのでは?)みたいなことを想像してしまった。しかしそんなわかりやすいドラマチックな悲劇がなくとも、元依存者は簡単に薬へと戻ってしまう。そもそも最初に手を出したきっかけも軽いものだ。
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2019年8月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第138回 バンブルビー

第138回「バンブルビー」

映画『トランスフォーマー』シリーズは大好きだし、基本全部劇場で観ている。にもかかわらず、ストーリーをほとんど覚えていない。観ている最中すでに物語への関心が薄く、次々と目の前で展開されるド派手な映像にひたすら興奮するという楽しみ方をしてきた。キャラクターもぼんやりとしか記憶していない。今作『バンブルビー』は、そんな僕のトランスフォーマー観を一変させる、キャラとストーリーを重視して作られた新しいトランスフォーマー映画だ。
主人公は父親を亡くした悲しみを抱え鬱屈した日々を送る17歳の少女チャーリー。自分の車を手に入れることができたら前に進むことができると考えている彼女は、誕生日に叔父から廃車寸前の黄色いビートルを譲り受ける。帰宅後自宅ガレージで点検中、突然ビートルが変形し…。
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2019年7月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第137回 移動都市/モータル・エンジン

第137回「移動都市/モータル・エンジン」

家々が折り畳まれ黒煙を吹き出しながら走り出す小さな岩塩採掘都市。後方から、渓谷のような轍を作りながら轟音とともに迫りくる大都市ロンドン。街の財産でもある積み荷の岩塩を全て荒野に捨て、速度を上げて逃走する採掘都市。追いかけながら巨大なアンカーを幾つも打ち出す大都市ロンドン。ミサイルが着弾するように、アンカーに貫かれる採掘都市。大興奮のロンドン市民。アンカーの鎖が巻き取られ、大都市ロンドンのボトム部分に開かれた開口部にズルズルと引き込まれる採掘都市。バクっとひと飲みする大都市ロンドン。口を閉じると現れる、ユニオンジャックが描かれた巨大扉。塗料は経年劣化で禿げかけている。そこに大きく映し出されるタイトル「Mortal Engines」。
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2019年6月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第136回 サスペリア

第136回「サスペリア」

とにかくすごい作品だった。元の『サスペリア』の記憶は朧気なのだけど、幼かった自分でも何となく理解できるポップさがあった気がする。バカっぽい映画ばかり観てる自分からすると、今作は高尚というか難解というか、よくわからないが故に、映画とかエンタメを超えて、理屈とかも超えて、ガチのやばい世界を覗き見てしまったような禍々しさを感じた。具体的なことを何も言えてないのだけど、無垢な子供がハードなAVをうっかり観てしまったような動揺を、言語化不能なまま伝えたくなる、そういう映画だ。
舞台は1977年冬のベルリン。アメリカから来た少女スージーは名門舞踏団マルコスのオーディションに合格し入団する。しかしその舞踏団には裏の顔があり、彼女は悪魔主義的な陰謀に巻き込まれていく…といった内容。
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2019年5月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第135回 ファースト・マン

第135回「ファースト・マン」

『ラ・ラ・ランド』の黄金タッグでニール・アームストロング船長の伝記映画を撮ったという話題作。エンタメ色の強い前作とはまるで違う、ひたすら静かで重苦しく、どちらかと言えば文芸的な作品だった。
冒頭、ニールが空軍のテストパイロットとして試験飛行をする。画面はブレまくり、ガタガタと不穏な音が鳴り響く。カメラはニールの視界とニールの顔を繰り返し捕らえ続け、狭苦しいコックピット内に留まり続ける。高高度を飛んで戻ってくるだけのシーンなのに、とにかく閉塞感と緊迫感に満ちていて、この映画が何を描こうとしているのかわかりやすく教えてくれる。
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2019年4月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第134回 ボヘミアン・ラプソディ

第134回「ボヘミアン・ラプソディ」

『ウィ・ウィル・ロック・ユー』がヒットした年に僕は生まれた。世代的に言えば、クイーンはリアルタイムでは全くない。詳しくもない。にもかかわらず、いつの時代もクイーンの曲はどこからか聴こえてきたし、聴いてきた。去年は『ハードコア』というハチャメチャバイオレンス映画の劇中に『ドント・ストップ・ミー・ナウ 』が流れ、観終わった後もしばらくノリノリで、歌詞はさっぱりだが口ずさんでいた。そんな程度のにわかクイーン好きの自分が見ても、本作は大感動の一作だった。
複雑な生い立ち、見た目のコンプレックス、ストレートでないセクシャリティ、色んな面で苦悩を抱えたフレディの生き様と、クイーンというバンドが伝説的に成功していく過程が、数々の名曲とともに描かれる。
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2019年3月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第133回 アンダー・ザ・シルバーレイク

第133回「アンダー・ザ・シルバーレイク」

世界的ヒットした『イット・フォローズ』。ホラー映画であり、青春映画であり、純粋一途な恋愛映画の傑作だ。一昨年に自分が観た映画の中で、一番に挙げて良いくらい好きな作品だったりする。そんなデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の新作が、今回の『アンダー・ザ・シルバーレイク』だ。
前作のような、わかりやすくエモい話を期待していくと完全に肩透かしを食らう。不穏で意味深で難解で、作家性の強いカルト的作品になっている。
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2019年2月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第132回 スカイスクレイパー

第132回「スカイスクレイパー」

『GODZILLAゴジラ』『キングコング:髑髏島の巨神』『パシフィック・リム』『ジュラシック・ワールド』と、巨大なロボやら怪獣やら恐竜やらが大暴れする大作映画を作り続けているレジェンダリー・ピクチャーズ。この製作会社が素晴らしいのは、「こういうの出しとけばいいんだろ?」的な作り方ではなく、「こういう怪物を出す場合の最も理想的な見せ方はこれだ!」と、シナリオや映像において一切の妥協をしていないところだ。そんなレジェンダリーが、ドウェイン・ジョンソン主演で『ダイ・ハード』的なアクション映画を作ったというのだから、期待できないわけがない。
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2019年1月1日 [施川ユウキ映画コラム]

施川ユウキ映画コラム「全ての映画は、ながしかく」第131回 エンジェル、見えない恋人

第131回「エンジェル、見えない恋人」

透明人間を題材にした作品といえば、エログロ暴力映画の巨匠ポール・バーホーベン監督作『インビジブル』のような面白ホラーをイメージしてしまうのだけど、本作は真逆と言ってもいい位繊細で一途なラブストーリーだ。
透明人間の少年エンジェルと盲目の少女マドレーヌが出会い、互いに恋に落ちる。自分が透明であることを告げられないまま時は経ち、ある日彼女が視力を取り戻す手術を受けることになり…。物語はシンプルで登場人物も少ない。基本的には、メイン二人とエンジェルの母親の3人だけだ。ほとんどのシーンがエンジェルの主観ショット。本作のCGは必要最低限に抑えられている。低予算ながらも技術とセンスでチープにならずに、足跡やシーツのふくらみ等、オーソドックスな演出で透明人間の存在を上手く表現している。
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